咬合、力、顎関節症への実践的アプローチコースを受けて
副院長の斉藤です。9/14はお休みいただきありがとうございました。
今回は大森先生の「ADPR 咬合、力、顎関節症への実践的アプローチコース」を受講しました。こちらは9/14.15と11/9.10の2部に分かれており計4日間のコースとなっております。
9月に学んだことは生理的顆頭安定位(中心位)の採得、犬歯誘導、大臼歯の咬合接触についてです。ここだけ見ても何のことからとお感じかと思われますので、以下で長々とご説明いたします。
まず、歯を悪くする要因は虫歯や歯周病は広く認知されていると思われますが、歯科において「力」という概念は一般的に浸透しているとは言えません。大学教育でも非常にふわふわした形でお話される程度で国家試験でもこれといった出題がありません。それは虫歯や歯周病に比べて科学的根拠(エビデンス)が少ないからです。そのため大学教育でも国家試験でも扱いにくく、そこについてはあまり考慮しないとする先生もいらっしゃいます。しかし現実には歯ぎしりや食いしばりをする人しない人がいて、する人特有の症状があり、多くに臨床に携わる先生が対応されています。
歯を失う原因で虫歯や歯周病は有名ですが、歯をぶつけてしまう、事故に遭うなどの外傷もありますよね。これを拡大解釈して、歯同士がなんらかの理由でぶつかり合って歯が欠けてしまうことも外傷と言えます。これを咬合性外傷と言います。そして不用意に歯ぎしりや食いしばりをすることもこの手の外傷の大きい枠で考えると歯に不用意に力をかけており、それが外傷のひとつと言えます。
力によるトラブルは多岐に渡り、歯に負担をかけることで歯自体が欠けてしまう、すり減る、それによる虫歯の進行、一方で歯がグラグラしてしまう、知覚過敏が起きやすくなる、歯周病が悪化しやすくなるといった症状や、顎関節にまで余計な負担をかけ顎関節症まで生じます。
つまり歯ぎしり食いしばりは歯自体、歯を支える顎の骨、そして顎関節の症状のどれか、もしくは併発をします。今回のセミナーではこれらに対する対処についての基本的な(といっても処置としてはそれなりにアドバンスです。)手技を学びます。
まず歯ぎしりや食いしばりは個人差がかなり大きいですが起きてる時も寝てる時も行います。特に寝てる時は起きてる時の5、6倍の力で行うとの論文もあります。これらをやらないようにするとなるの「眠らないこと」となりますが、もちろんこれは現実的でありません。食いしばらないようにすることは非常に難しいです。むしろ歯科では食いしばりを根本的に無くすよりもコントロールすることを主眼において治療を行います。よく聞くマウスピース(ナイトガード)もその方法になります。このマウスピースに関しては11月の回で詳しく学んでいきます。
さて、9月はまず第一にどのような咬み合わせ(咬合)が理想的かを学びます。先ほど申し上げたように歯ぎしり、食いしばりは根絶は難しいがそれに対するコントロールは行われます。その一つとしてはそもそも歯ぎしり、食いしばりに耐え得る咬み合わせ(咬合)を理解しそれに向かって治療を行うことです。
人の咬み合わせにはいくつかの種類があります。歯科では下顎がどの位置にあるのか、で考えます。その一つが咬頭嵌合位(ICP)です。これは上下の歯を噛み合わせて一番多くの歯が接触する位置です。一方で生理的顆頭安定位(中心位、CR)というものもあり、これは端的に言うと「下顎が本来行きたい位置」、専門的には少し以前のアメリカの補綴用語から引用すると「左右の顆頭がそれぞれ左右の関節窩内の前上方で、関節結節の傾斜部と対向し、かつ関節円盤の最も薄い部分と嵌合している上下顎の位置関係」とされています。小難しいですね笑
この生理的顆頭安定位(CR)はその人の中で顎関節症状が比較的起きにくくなる咬み合わせの範囲です。
これがCRの咬み合わせです。
では人はICPがCRの範囲にあるのでしょうか。実は多くの人がある程度のズレがあります。大抵の場合はそもそも自覚症状もなく、それほど問題が生じませんが、生ずる場合上記のようにはぎしり、食いしばりによる歯の破折、歯槽骨の吸収、顎関節症などのトラブルが生じます。
そのようなケースではそのCRの位置情報を正確に把握し、その位置できちんと噛み合うように矯正、補綴を用いて作っていきます。
今回行ったのはこれまで長々とお話ししたCRバイトを採得する方法、そして理想的な咬合を作るための基礎である犬歯誘導、臼歯の咬合調整です。
こちらが犬歯誘導といって顎を横に動かすときに犬歯がその歯の斜面を登るような軌跡を描きます。
第一大臼歯(6番目の歯)の理想的な当たり方
第一大臼歯(6番目の歯)を理想的に当てるよう調整をする実習
これは現大阪SJCDの会長もされている大森先生が師従された咬合において世界的に有名でそのSJCDを立ち上げた本多正明先生の理論に基づいております。年明けから本多先生の元に勉強させていただきに行く予定としております。こちらで詳しいことはまとめられればと思います。
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